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SHINOBI~キリ・セキュリティ株式会社身辺警備部隠密警護班~ (3)


                 *


 ハナは、藤堂宅の立派な門がまえを、放置自転車に跨り ゴルフクラブ片手に、一度、下から上へと ゆっくり視線を移動させて仰いでから、閉ざされた門扉を押してみる。が、開かない。
 正門以外の入口を知らないため他の入口を探して、ハナは、自転車を押し、外塀づたいに正門から向かって左側方向へ進んだ。
 角を折れてからも、そのまま塀づたい。暫く歩いて、ごく普通の大きさの、しかし頑丈そうなドアを見つけ、押してみたり引いてみたり。 そこも開かなかった。
 もう、これ以上 入口を探すのが おっくうになり、また、塀が、自転車を踏み台にすれば 越えられる高さに思えたため、自転車を出来るだけ塀に近づけて停め、その上に立ってみる。
 すると、塀の高さは 丁度 ハナの身長くらいになった。
(あ、このくらいなら……)
ハナは塀の上に両手をついてから、自転車を蹴って跳躍。塀を越えて中に入った。

 藤堂宅の敷地内に着地したハナの すぐ目の前には、白い壁の ごくシンプルな建物。 
確か、使用人棟だ。
 ハナは、藤堂宅敷地内図を頭の中に描き、それを基に、使用人棟と使用人棟の裏の森との間の狭い隙間を通って 藤堂が普段生活している離れへ行こうと考えた。
(もしも今、離れにいなくても、離れで待ってれば、そのうち やって来るはず! )
 離れへ向かうべく、ハナが、使用人棟の裏手に回った瞬間、ピンポンピンポンピンポン、と、大きな電子音が鳴った。
(! )
ビクッとするハナ。 直後、斜め前方、使用人棟と母屋を結ぶ、渡り廊下の始点から強い光。渡り廊下の屋根の隅に 使用人棟の裏手を向けて取り付けられた、センサーライトの光だった。
 ハナ、光を避け、光の当たっていない ライトの真下に姿勢を低くして入り、鳴り続けている電子音から逃げるように 渡り廊下を這う形で横切った。 すると、ライトが消え、電子音も止まる。
 ホッとしたハナだったが、頭上からの弱い光を感じ、見れば、それまでついていなかったように思う、使用人棟の2階の部屋の明かりがついていた。電子音が 中の人に聞こえたのかも知れない。 
 焦って、身を隠せる場所をキョロキョロと探すハナ。と、使用人棟の向かい、ごく薄い金属製と思われる ハナの背丈ほどの白色っぽい塀が目に留まった。
 その向こうに身を隠そうと、ハナは塀を乗り越える。

 乗り越えた先は、塀で四方を囲われた25メートルプールほどの広さの空間だった。 
 ハナの降り立った地点のすぐ横には、外塀に平行するように、白い塀と同じくハナの背丈ほどの 低めの天井をもつ、レンガ造りの建物。建物と向かい合う位置の塀に、簡単なつくりのドアがついている。
 確認のため 明かりのついた窓を振り返り、ハナはハッとした。丸見えだ。ハナのほうから窓が見えるということは、窓からもハナが見えるということだ。
 (あ、どうしよう! えっと、見えないようにするにはっ……! )
ハナ、大急ぎで考え、使用人棟側の塀に背中で張りついた。首を無理に捻って窓方向を見てみる。
(うん、見えない! )
 その時、グルル……と、低く、唸り声のようなものが聞こえた気がし、ハナは辺りを見回して、すぐに見つけた。レンガの建物から、複数の黒い影が ゆっくりと出て来ているのを。影は、全部で5つ。犬、だった。体高70センチほど、黒く艶やかな短毛の、スマートだが筋肉質の犬。
(そうだった! ここ、犬舎だ! おじいさんの言うことしか聞かない、おじいさんの犬の……っ! )
 犬たちは、唸りながらハナに詰め寄ってくる。
(咬み殺されるっ……? )
死にたいはずなのに、死にたくない、と、ハナは思った。藤堂に殺されて死ぬのだけは、絶対に嫌だと思った。
(だって、それって、すごい敗北感。すっごく悔しい……! )
藤堂の家の犬に殺されるのは、藤堂に殺されるのと同じ気がするのだ。
 ハナ、ゴルフクラブをグッと握り直し、必死で振り回す。
 が、犬たちは、かまわず にじり寄って来る。
 死にたくない! 負けたくないっ! 恐怖心を振り払うように、ワーッ! と大声を上げながら、クラブを振り回し続けるハナ。
(っ? )
不意にクラブが軽くなり、転んだりなんだりするほどではないが、ハナはバランスを崩した。グラついていた先端が、振り回したことにより取れて 飛んでいったのだ。
(あ……)
飛んでいった先端は、ハナの目で追っていた先で、ハナから一番遠いところにいた1頭の頭部に当たった。
 先端が当たった犬は、ガウッと吠え、ハナに飛び掛かる。
(っ! )
固まるハナ。
 瞬間、ハナの視界の隅で、1つの影が 外塀の方向から飛びだして来、犬舎の屋根の上、ハナと犬たちの間の地面、と、移動。ハナの体を、背中と膝の裏を支える形で すくい上げ、再び犬舎の屋根の上へ。 その間、ほんの1・2秒。 
 背中と膝の裏に当たる 硬く温かい影の感触に、ハナは憶えがあった。 影は、先程 ビルから飛び降りたハナを受け止めた男性だった。
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獅兜舞桂

Author:獅兜舞桂
獅兜座(しっとざ と読みます)座長・獅兜舞桂(しっとまいけー)です。
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以前は恵子ミユキの名で活動しておりました。

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