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スーパーファイブ表紙最新(タイトルあり)

画像素材として、
キャラクターなんとか機様にてキャラクターを作成させていただきました。
ニコニ・コモンズ様より、
クロイリク様、さっちゃん様、Rin様の作品をお借りいたしました。
ありがとうございました!
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DPL戦闘班スーパーファイブ~ピンクの憂鬱~ (1)


               * 1 *



 ドーンッ!
 建物全体が横に大きく揺れた。
(地震っ? )
 皮膚科「四愛医院」の待合室。 壁と向き合うかたちで置かれた長椅子に腰掛けたまま、読んでいた雑誌から顔を上げ、辺りを見回したのは、三室桃佳、高校2年生。通り道だからと母から頼まれて、学校帰りに、バイト先のスーパーマーケット「ヤオシゲ 壱町田支店」へ向かう途中、弟のアトピーの薬を貰うため立ち寄っていた。
 他の患者たちも、三室と同様、キョロキョロ。
 受付兼会計の女性が、
「皆さん、落ち着いてください! 」
受付カウンターから待合室に飛び出して来、その場にいる誰よりも落ち着き無く大きな声を出す。
 直後、三室が座っている椅子の真正面の壁が大きく崩れて穴が開き、冷房の効いた待合室に、7月の午後4時過ぎのムッとした空気が流れ込んできた。
(……! )
三室は、その崩れた壁の外側に佇んでいるモノを目にし、固まった。
 ウシだ。優に体高3メートルはある、巨大な黒いウシ。
 ウシは、三室を真っ直ぐ静かに見据えている。
 院内は騒然となった。
 しかし三室は、ウシの迫力に声も出ない。 ウシと見つめ合ってしまうこと数秒の後、ウシが地面を蹴り、三室に向かって突進してきた。
 逃げなければ危ないことくらい分かっているが、体が動かない……。三室は、恐怖からギュッと目を瞑る。 瞬間、体がフワッと宙に浮く感覚。驚いたが、痛みなどは感じない。 
(……? )
そっと目を開けて見ると、フルフェイスの赤いマスクが見えた。
体には、おそらく、マスクと同色のボディラインにピッタリフィットした服を纏っているであろうこの人物を、三室は以前、この人物と、その仲間を取り上げた、地元テレビ局の番組で見たことがあった。ここ数年、三室の住む地域一帯の住民の生活、そして生命をも脅かしている「超地球生物」と呼ばれる謎の生物と戦う正義の戦士「スーパーファイブ」。 今、目の前に見えている、この人物は、5人いるスーパーファイブのメンバーのうちの1人、「スーパーレッド」だ。
 三室は、レッドの逞しい腕に、お姫様抱っこされていたのだった。
 レッドは、三室を抱いた状態で横っ飛び。
 ほぼ同時、ドカッという衝撃音。
 音の方向を見た三室は、ゾッ。三室が座っていた椅子の背もたれをツノで突き刺したウシが、刺さったまま取れなくなってしまったらしい椅子を振り払おうとしているところだった。…もし自分がそのままそこに座っていたらと思うと……。
 三室が助けてもらった礼を言おうとした、その時、ウシが椅子を振り払い、体の向きを変えて、再び三室を見据えた。
 ウシは、後足をガッガッと踏み鳴らす。
 三室は恐怖のあまり視線はウシに釘付けになったまま レッドの首にかきつき、レッドのほうも三室を抱く手に力を入れる。
 そこへ、崩れた壁の大きな穴から小さな何かが飛んで来、ウシに刺さった。
 ウシは一度、悲鳴に似た高い声を上げ、暫くの間、もがくように、その場で前足と後足で交互に床を蹴って激しく当たりを震動させ、暴れていたが、やがて、ドサッと床に崩れ、動かなくなった。
 それを待っていたかのように、レッドと色違いのコスチュームに身を包んだ、スーパーファイブのブルー・グリーン・イエローが壁の大穴から駆け込んで来、ウシを囲んで跪く。
 そして、確認するようにウシに触れ、イエロー、
「麻酔が効いたみたいね」
呟いてから、バッと顔を上げてレッドを見、
「あんたは赤いんだから、ウシの目の前をチョロチョロしたらダメじゃないのっ! 」
怒鳴りつけた。
「すみません……」
レッドは素直に謝る。
 その声に、
(あれっ……? )
同時にドキッ。三室は聞き覚えがあった。
 レッドは三室を床に下ろし、
「もう大丈夫だよ。怪我が無くてよかった」
(やっぱり、この声は……)
似ていると言うより、全く同じ声。優しい喋り方まで同じだ。ウシへの恐怖とは全く無関係にドキドキしながら、三室は、しっかり抱いてくれていた感触を、自分を抱きしめるようにして確かめる。
(でも、まさかね……)
三室は、すぐさま自分の考えを否定してからレッドを仰いだ。
「助けてくれて、ありがとうございました」
 レッドは軽く頷く。 
 マスクで表情など分からないはずなのだが、三室には、レッドが優しく微笑んでくれたように思えた。一度は否定したが、本当に、雰囲気まで、よく似ている。
 レッドは仲間のところへ戻り、4人で力を合わせてウシを持ち上げた。
(すごい力……)
三室は、初めて目の当たりにするスーパーファイブの腕力に驚きながら、4人が壁の大穴からウシを外へ運び出し、医院の隣の空地に停めてあった、長さ・幅・高さ、何処をとっても、よく見る4トン保冷車の倍以上の大きさの超大型トラックの荷台に載せる様を、大穴から眺める。
「三室さーん」
受付で呼ばれ、三室がカウンターまで行くと、受付兼会計の女性は、薬の入った白い紙袋を差し出し、
「お待たせしました。2100円になります」
事務的に言ってから、からかうような口調で、
「怪我しなくてよかったわね。しても、治療は出来るけどね。皮膚科だけど」
 三室は反応に困って曖昧に笑いながら2100円を払い、薬を受け取って四愛医院を出た。


                *


 バイト先のヤオシゲへは、四愛医院から愛用の自転車で20分弱。
 到着後、自転車は1階裏側の従業員用駐輪場に停める。
 ヤオシゲは、建物が少し変わった構造になっており、一般の道路に面したメインとなる店舗入口は2階、売場も2階にあり、1階部分に、お客様駐車場と車で来店されたお客様用の入口、テナント2軒の他、車で来店されたお客様用入口と向かい合う位置に、「関係者以外立ち入り禁止」の張り紙が貼られたドア。その奥には、店長室、事務室、更衣室、休憩室などがある。
 三室は、従業員用駐輪場から店内を通らず直接出入り出来る、関係者以外立ち入り禁止のドアとは別にある、立入禁止区域につながる出入口を入り、更衣室のロッカーに荷物を置いて、学校の制服の上からヤオシゲの店名入りエプロンをし、タイムカードを押してから階段を上って2階のバックヤードへ。青果部の作業場の前を通り過ぎ、角を曲がると、三室が所属するセルフ部の日配商品以外の商品の入ったダンボールが壁際にビッシリと積まれた、セルフ部の作業場代わりの薄暗い通路。そこで少女向け漫画雑誌と雑誌の付録を1冊分ずつ丁寧に しかし手早くビニール紐で纏めている、セルフ部の26歳のサブチーフ、桃沢里絵を見つけ、
「桃沢さん、こんにちは」
その横顔に声を掛けた。
 桃沢は仕事の手を休め、後ろでスッキリと1つにまとめたウエストまでの長さの艶やかなストレートの黒髪を微かに揺らし、ゆっくりと三室に向き直る。
「こんにちは。…良かった、会えて……」
どこか寂しげな、疲れたような笑顔。
(……? )
いつもは朗らかな桃沢の元気の無い様子に、心配になる三室。
 桃沢は続ける。
「私ね、今日で会社を辞めることになったの」
(……! )
「さっきモモちゃん、途中で病院に寄るから遅れるかもしれないって連絡くれたでしょ? 私、今日は定時の5時で上がるから、会えないかもって思ってたの」
 三室はショックだった。 三室がヤオシゲでバイトを始めて半年。まだ何も分からなかった頃に親切丁寧に仕事を教えてくれたのは桃沢だった。すっかり仕事に慣れてからも、学校の事などで落ち込んでいる時など、桃沢は、いつでも優しく相談にのってくれた。弟と2人兄弟の三室は、桃沢さんみたいな お姉ちゃんがいたらいいのに、と、いつも思っていた。その桃沢が、いなくなる。ショックと寂しさ、しかも、あまりにも突然に。
 三室は言いたいことが心の中で溢れかえり、混乱して逆に言葉を失い、俯いた。俯いたまま、
「どうして、ですか? 」
やっと、それだけ言う。
 桃沢は言葉に詰まり、少しして困ったように、申し訳なさそうに、
「ごめんね、それは言えないの」
 桃沢は大人だ。人に言えない事情もあるのだろうということくらい、三室も頭では理解できる。 しかし、三室のほうは桃沢に、自分のことを色々話してきた。それなのに、桃沢は話してくれない。……寂しかった。
「そんな顔しないで」
桃沢は三室の顔を覗きこむ。
「全然会えなくなるわけじゃないんだし。……また、いつでも電話して? ね? 」
 そんな顔、のまま三室が頷くと、桃沢は時計を見、また、寂しげな疲れたような笑顔。
「もう時間だから、私、上がるね。雑誌の続き、お願い出来る? 」
 三室の、はい、という返事を受け取って、桃沢は、お先に、と、去って行った。 
 三室は、桃沢が階段の方向へと曲がったために見えなくなるまで見送って、溜息をひとつ。それから、桃沢の残した雑誌の作業の続きに取り掛かる。 


                 *


 雑誌の作業があと1冊分で終わるというところで、
「モモちゃん」  
後ろから声が掛かり、三室は、ドキッとしながら振り返った。
 振り返る前から、自分の後ろにいるのが誰なのか、三室には分かっていた。……入社2年目の精肉部社員、赤木廉太郎。 声だけで分かる理由は、胸のドキドキが正直に説明している。ヤオシゲでバイトを始めた、その日に、ひと目見た瞬間、それほど背の低いほうでないはずの自分が見上げてしまうほどの長身と、精悍な顔立ち、仕事中の真剣な姿に心惹かれ、初めて話しかけられた時には、外見から想像のつかないソフトな口調に驚き、感動すらした。赤木が傍を通る度、話しかけられる度、半年経った今でも緊張する。さっき、四愛医院で巨大なウシから助けてくれたスーパーファイブのレッドの声は、赤木にそっくりだった。だから、あんなにドキドキした。
「な、何ですか? 」
三室はドキドキを必死に抑え、赤木の顔を仰いで次の言葉を待つ。
「大切な話があるんだけど、ちょっと一緒に来てくれる? 」
 ドッキーンッ! 一瞬、三室は心臓が体の外に飛び出してしまったかと思った。つい、その、大切な話、の内容に期待してしまう。抑えきれない鼓動が痛い。
「あっあの……」
頭の中も、もうメチャクチャだ。どうしていいのか分からず、下を向く。 
 頭上から、
「キリのいいところまで終わってからでいいよ」
赤木の優しい声。
 三室は、
「は、はい」
赤木が見守る中、緊張に震える手で1冊分だけ残っていた作業を再開、何とか終え、
「終わりました」
「じゃ、行こうか」
先に立って歩く赤木の後ろを、
(何だろう、話って……)
三室は、胸の高鳴りと緊張による震えは、そのままに、俯き加減でついて行く。

DPL戦闘班スーパーファイブ~ピンクの憂鬱~ (2)


               *


(どこまで行く気だろ……? )
赤木の後ろをついて歩く三室のドキドキは、だいぶ治まってきていた。歩いている距離が予想外に長いためだ。大切な話が他人に聞かれたくない内容だというのなら、従業員用の駐輪場まで行けば充分なはずだ。だが、駐輪場への出入口は、とっくに過ぎた。商品を納めに来たトラックが乗り付けてカゴテナーを上げ下ろしするための広めのスペースも通り過ぎ、そのスペースと事務室の窓口に挟まれた従業員用出入口、事務室のドア、休憩室前、更衣室前も通り過ぎて、店長室の前で、やっと、赤木は足を止める。
(どうして、店長室……? )
怪訝な表情になる三室の前で、赤木は店長室のドアをコンコン。
「失礼します」
言って、ドアを開け、入って行く。
 三室も、ワケが分からないまま、
「失礼します」
続いた。
 奥の机で書類に目を通していた50代の店長が顔を上げ、眼鏡の奥の小さな目でニッコリ笑う。
「ああ、ご苦労様」
 三室はガックリした。自分に話があったのは赤木ではなく店長で、赤木に頼んで連れてこさせたのだと理解したのだ。
 だが赤木は、ご苦労様、と言った店長に歩きながら会釈し、店長の机の真横に位置するドアを開け、
「モモちゃん、こっち」
三室を呼んだ。
(? ? ? )
三室は、本当にもう、何が何だか分からず、赤木に倣って店長に会釈してから、赤木から言われるまま、赤木が開けて待ってくれているドアをくぐる。

 ドアの先は薄暗く、ドアの幅程度の狭い階段が下へと続いていた。
 ドアを入った三室が、すぐの所で待っていると、赤木も入ってドアを閉め、三室の脇をすり抜けて再び先に立ち、階段を下りて行く。
 この店に地下があるなど、三室は知らなかった。
 バックヤードの1階と2階を結ぶ階段と同じくらいの距離を下りたところで、階段はほぼ180度折れ曲がり、そこを中間地点に、まだ階段が続く。 その終点に、売場ほどの明るい光が見えた。
 階段を下りきって出た、その明るい場所は、下りてきた階段の幅の3倍の幅の廊下。左右に分かれ、いくつものドアがある。
 赤木は右に曲がり、廊下を奥へ奥へ。
 三室は、キョロキョロしながら、ついて行く。
 白い床に白い壁。ドアは金属製だろうか、銀白色だ。明るく、小さなゴミひとつ落ちていない、シミひとつない清潔な廊下。大きな病院の廊下に似た、冷たい感じがする。廊下には、三室と赤木以外誰もおらず、いくつも並ぶドアの向こうからも、人の気配が感じられない。三室と赤木の靴音だけが廊下に響く。
 一体、どこへ連れてかれるんだろう。……三室の胸にドキドキが復活。しかしそれは、さっきのものとは全く異質のものだった。
 と、その時、背後で足音。立ち止まり、振り返って見ると、白衣姿の男性がドアから出てきたところだった。男性は足早に、出てきたドアのすぐ隣のドアに入る。他にも人がいたのだと、少し安心する三室。
「モモちゃん」
赤木に呼ばれて向き直ると、赤木は、もう、だいぶ離れた所、突き当たりの、他のドアの倍の大きさのあるドアの前に立っていた。
 三室が追いつくのを待って、赤木は、左肘を曲げて胸の前に持っていき、ドアの、向かって右脇の壁にはめ込まれた黒い長方形のガラスのようなものに、腕時計の文字盤を向けた。文字盤を覆うカバーもベルトも赤く、何故か小さなアンテナのようなものがついている、個性的な時計。ドアがピッと鳴り、ウィンと音をたてて自動的に左右に開く。
「三室桃佳さんを連れてきました」
言いながら、赤木は開いたドアの中へ1歩入り、三室を振り返った。
「入って」

 言われるまま三室が入ると、後ろで勝手にドアが閉まる。
「連れてきました」など、話があったのは赤木ではなかったことは決定的だが、三室はガッカリしなかった。店長室で店長の「ご苦労様」を聞いたあたりで、既に話の内容への期待が薄れていたことも理由のひとつ。だが、それ以上に、たった今通されたばかりの、テレビの特撮ヒーローものに出てくる秘密基地のように壁一面を正面の大型モニターを始めとする沢山の機械で埋め尽くされた部屋。部屋に入って正面のドッシリとした机の向こうで、やはりドッシリと椅子に座っている50代半ばくらいで鉄兜のようなヘアスタイルをした見知らぬ中年女性の静かな迫力。圧倒されて、ガッカリする余裕も無かったのだ。
 救いは、机の左右に分かれ三室のほうを向いて立つ、見慣れた男女 左側に立つのは、30歳の鮮魚部チーフで、年甲斐の無い明るい茶髪・赤木よりも高い超長身が特徴の青島欣二と、45歳にして既に8割白髪の青果部補填で、三室のほぼ2・5倍と恰幅のいい杉森忠。右側に立つのは、年齢不詳(推定20代後半から30代前半)、ヘアスタイルもメイクも巷の流行を取り入れ過ぎくらい取り入れているレジチーフ、黄瀬川素子。赤木が三室から離れ、黄瀬川の隣に並んだ。
 見知らぬ中年女性が立ち上がり、
「ようこそ、『DPL司令室』へ」
言って、貫禄の感じられる笑みを浮かべ、三室に右手を差し出す。
 黄瀬川が、
「DPL司令室長の横山さんよ」
補足したが、
(? ? ? )
三室には不十分だった。
DPL司令室長とは? ヤオシゲが、「DPLカンパニー」という会社のスーパーマーケット部門の店名であるということは、三室も知っている。「DPL」は、バイトの面接の時に店長から聞いたところによれば、「生活を守る役目」という意味の英語の略で、DPLカンパニーは、人々の生活を守るという観点から様々な事業に取り組んでいる、地元屈指の大企業だそうだ。
 社名プラス最後に「長」がつくのだから、
(会社のエライ人、かな? )
などと考えながら、三室は机の手前まで歩み寄り、
(でも、エライ人がバイトに何の用だろ? )
疑問を残したまま、差し出された手を握り返した。
 横山は一度、しっかりと三室の手を握りしめてから手を放し、
「三室桃佳さん」
静かに口を開く。
「あなたを、DPL戦闘班、通称・スーパーファイブの、ピンクに任命します」
「は? 」
当然、言葉の意味は理解出来た。四愛医院で今日、三室を救ってくれた、正義の戦士たちの仲間に加わり、共に戦えと言っているのだ。だが、何故、このヤオシゲの建物の中で、会社関係者がスーパーファイブのメンバーを任命するのだろう。それも、普通の高校生の自分を……。第一、今日、四愛医院では見かけなかったが、スーパーファイブには既にピンクが存在しているはずだ。以前見た、スーパーファイブを取り上げた地元テレビの番組に出ていたのだから、間違いない。三室は、話の展開についていけない。
 横山は、三室の「は? 」に対し、特に何の感情も込めず、もう一度、全く同じ言葉を繰り返してから、
「これまでも同じヤオシゲの従業員として共に働いていたのですから、紹介するまでもないとは思いますが、レッドの赤木廉太郎。通称、レン。ブルーの青島欣二。通称、キン。グリーンの杉森忠。通称、スギ。イエローの黄瀬川素子。通称、モト」
ひとりひとりの名前を呼び上げ、呼び上げられた名前の主は1歩前へ出ては戻る。
「あなたは三室桃佳ですから、『モモ』でいいですね? 」
 これは夢だと、三室は思った。初めてスーパーファイブの実物を目にしただけでなく、自分が助けられるなど滅多に出来ない体験をしたものだから、しかも、レッドの声が赤木に似ているなどと思ったものだから、こんな夢を見ているのだ、と。テレビでも取り上げられるような有名な正義のヒーローたちの正体が、実はこんなに身近な人たちだったのに今まで気づかなかったなど、ありえない、と。
 夢に違いないの何のと、自分の頭の中だけで何となくぼんやりと思うだけで何の反応も示さない三室を、横山は全く意に介さず、椅子に腰を下ろしてから、机の引出しから赤木が身に着けている物と色違いのお揃い、ピンク色の時計を取り出して一旦机の上に置き、机の上を滑らせるようにして三室のほうに差し出した。
「これは『スーパーブレス』です。戦闘時のユニフォームである『スーパースーツ』を着用する際に使用します。スーパースーツは優れた強度であなたの身を守り、また、あなたの腕力や跳躍力、走力をはじめとする様々な能力を何倍にも引き出し、戦闘に役立てます。戦闘の際の基本的な動作等はスーパースーツが教えてくれますから、戦闘の経験が無くても心配要りません。他の機能としては、私や他のスーパーファイブのメンバーとの通信、DPL司令室をはじめとする、このDPL基地内の主要施設へ入室する際の鍵などの機能があります。普段も時計として使用していただいて結構ですよ」
そこまでで横山は、今度は何やら数枚の紙をホチキスで止めただけの薄い冊子を取り出し、やはり机の上を滑らせて三室に差し出してから、椅子の背もたれに寄りかかるかたちに深く腰掛け直し、両の肘掛に肘をついて手の10本の指を腹の上で組む。
「細かいことは全てこれに書かれているので後で目を通しておいていただくとして、今は簡単に説明させていただきます。まず、賃金についてですが、現在の時給とは別に、スーパーファイブとしての1回の出動につき3000円の手当を……」
 三室はそれまで、一方的な横山の説明を、あまりの展開に呆然と流してしまっていたが、ハッと我に返って、
「あ、あのっ! 」
止めた。
「あたし、まだ、やるって言ってないんですけど……」
 横山は首を横に振り、淡々とした口調で、
「あなたの意思は聞いていません。この先 スーパーピンクとして働いていただくことを大前提に、ここに呼びました。スーパーファイブに関する規則の1つに、『スーパーファイブ関連部署を脱退する際、同時にDPLカンパニーを退職するものとする』というものがあります。その目的は、秘密を守るためです。あなたも、スーパーファイブの存在は知っていても、その正体は、今、知ったばかりのはずです。DPLカンパニーが母体であるということも……。全て秘密なのです、社外にも、社内にも。社外に口外しないことはもちろんですが、黙っていても、社内には秘密が洩れやすいものですからね。ですから、元・関係者には辞めていただき、秘密を知る人数を最少限に抑えているのです。先代のピンクにも、規則に従い、今日付けで辞めていただきました」
そして最後に身を乗り出し、拳にした両手を机について、挑むような視線を三室に向ける。
「繰り返すようですが、秘密を守ることが目的ですから、この司令室に足を踏み入れた以上、スーパーファイブの正体を知ってしまった以上、辞令を受けられないというのなら、あなたにも、辞めていただくほかありません」
 三室は、とりあえず返事を保留したまま説明の続きをしてもらえるよう頼み、いいでしょう、と頷いた横山による、賃金の説明の続き、万が一の時の保障についての説明、重要な規則など、一通り聞いた上で考えた。 ……高校生であり、親と一緒に暮らしている自分が、正体を隠して24時間 365日、いつでも出動するというのは、かなり厳しい気がする。しかも、万が一の時のための保障があり、優れた強度のスーパースーツを身に着けるにせよ、相手にするのは、四愛医院に現れた巨大なウシのような恐い生き物なのだと思うと、1回の出動につき3000円の手当というのは微妙な金額に思えた。ただ、赤木と行動を共に出来るのは魅力だ。何より、三室が通う学校はバイトをするのに許可が必要であり、ヤオシゲを辞めて他のバイトを始めるにあたり許可を取り直すのは面倒。その上、学校の先輩から聞いた噂では、あまりバイトをコロコロと替えていると、就職先を探す時に学校の推薦が取りづらくなるらしい。……それならば、と、
「やります。やらせて下さい」
とりあえずやってみればいい、と、結論を出したのだ。やってみて、無理だったら辞めればいい、と。同じ辞めるなら、1日でも遅いほうがいい、と。
 三室の言葉に、横山は満足げな笑みを浮かべる。
「よろしくお願いしますね」
「はい」
 ごく普通に返事をした三室に、斜め前から黄瀬川が、
「背筋を伸ばして! もっと大きな声で! 」
 三室は、まるで号令のような、その声に圧されて背筋を伸ばし、
「はいっ! 」
大きな声で、もう1度、返事をし直した。
 その時、ビービービービー、と、けたたましい音が鳴り、正面の大型モニターの上のランプが赤く点滅。
 黄瀬川がモニターに駆け寄り、モニター下のキーボードを操作してから横山を振り返って、
「『声明文』が届きました! 」
そして再び、キーボードに向かう。
 数秒後、モニターの大画面に文章が映し出された。
 三室、
「…『現地球人類の都合により誕生したにもかかわらず、何故、悪者扱いされねばならぬのか、非常に疑問である』……? 」
ブツブツと声に出して読み上げ、首を傾げる。
(何? これ……)
 黄瀬川はキーボードに向かい続け、赤木、青島も、それぞれ別の小さなモニター画面に向かいキーボーードを叩き始めた。
 杉森は三室に歩み寄って来、三室の疑問に答える。
「あの文章はね、声明文、っていって、僕たちが戦っている相手である『新地球人類』って名乗る人物が送ってくるんだよ。まあ、そうは言っても、直接戦う相手は、今、世間を騒がせている超地球生物で、新地球人類の正体は、人物、なんて1人みたいに言っちゃったけど、何人もいる集団なのかも知れないし、その人数さえ、僕たちも知らないんだけどね。ちなみに、声明文にも書かれてた、現地球人類、っていうのは、僕たちスーパーファイブも含めた、地球で普通に暮らしている人たちのことだよ。新地球人類が声明文を送ってきた後、必ず何処かに超地球生物が現れるんだ」
 杉森の説明に耳を傾けながら、三室は、真剣な表情で機械を操作する3人を見た。
 杉森、三室の、その無言の問いにも、 
「超地球生物の出現場所を特定してるんだよ」
答えてから、少し肩を竦めて見せ、
「僕は、ああいう新しい感じの機械は苦手だから……」
 ややして赤木、
「出現場所確認! 『三島駅』構内! 」
 横山は立ち上がり、三室・赤木・青島・杉森・黄瀬川をグルリと見回す。
「スーパーファイブ! 」
 赤木・青島・杉森・黄瀬川は、一斉に横山に注目。踵を打ち鳴らして姿勢を正し、
「出動! 」
横山の切れのいい言葉に声を揃え、
「はいっ! 」
 その様をポカンと眺めている三室。
 赤木・青島・黄瀬川は駆け出し、司令室を出て行く。
 杉森は、一旦、出入口に向かって1歩踏み出したが、足を止め、体の向きを変えて横山の机まで歩き、机の上のピンクのブレスを手にとって三室に手渡した。
「モモちゃんも」
 三室、
「……はい」
ブレスを受け取り、他のスーパーファイブのメンバーたちに倣って左手首にブレスをつけ、杉森に導かれて司令室を出る。

DPL戦闘班スーパーファイブ~ピンクの憂鬱~ (3)


                *


 先に司令室を出た3人の背中を追って、杉森と共に清潔で静かな廊下を走り、三室が行き着いたのは、店長室から地下へ下りた階段を中間地点に司令室とは反対側の突き当たり。司令室のドアと全く同じつくりのドアを杉森がブレスで開け、その先の細い階段を下りていく。
 三室が、杉森のすぐ後ろに従って下りていくと、そこは、少なくとも一般的な野球場ほどの広さがあると思われる、広い駐車場だった。四愛医院で見た超大型トラック。その超大型トラックと微妙に色が違うだけで全く同型に見える超大型トラックがもう1台。それから、先の2台とほぼ同じ大きさの貨物ワゴン車が1台、ドアのほうを向いて停められている。
 三室のブレスが震動した。
 杉森、
「ブレスに向かって『通話』って言って」
 三室が教えられたとおりにすると、ブレスから、
「モモちゃんは、こっちだよ」
青島の軽いノリの声。
 辺りを見回す三室。と、四愛医院で見たほうのトラックの運転席で青島が手招いているのを見つけた。
 杉森、三室に通信の切り方を教えてから、三室の肩をポンッと軽く叩き、
「じゃあ、また後で」
もう1台のトラックの運転席に乗り込んだ。その助手席には赤木、ワゴン車の運転席には黄瀬川が、それぞれ座っている。
 三室、青島の助手席に乗り込み、
「何か、スゴイ車ですね」
座席に腰掛けると、自動的にシートベルトが締まった。
 三室は驚いて声を上げる。
 そんな三室に、青島、
「カッコイイ車だら? 」
言って、ニヤッと笑い、
「オレとモモちゃんが乗ってる、この車は、『スーパーマシン・ゼロツー』。荷台の3分の2は、研究用に捕獲した超地球生物を運ぶためのスペースで、残り3分の1は、麻酔銃とか、通常携帯しない道具を仕舞ってあるんだよ」
軽い口調で説明し終えてから、青島は前を向き、真面目な顔でハンドルの中央部分にブレスをかざした。
「スーパーマシン・ゼロツー、発進! 」
 その掛け声の直後、ゼロツーは車体の下の床ごと真横にスライド。車体の長さ分ほどバックした後、今度は真下の床ごと回れ右。
 目の前の大きなシャッターが、ゆっくりと開いていく。
 完全に開いたシャッターから、先ず、杉森運転のトラックが駐車場を出て行き、次にゼロツー、その後ろに黄瀬川運転のワゴン車が続いた。
 シャッターの向こうは、超大型のマシンが楽々通れる地下トンネル。
(すごい! )
三室は、すっかり感心する。
 青島、
「すげーら? 」
自分の手柄であるかのように得意げに、
「ここはスーパーマシン専用道路で、DPL基地を中心地点に半径30キロメートルの地点まで網の目みたいに広がってるんだ。まだ掘り進めてる最中だから、まだまだ広がってくよ。地表に点在してる地上に出るための専用扉があって、超地球生物の出現場所に一番近い扉まで、この道路を使って移動するんだ」
(へえ……? )
扉が地表に点在していると言うが、三室は今までに一度も その、扉らしき物を目にしたことが無い。そう青島に言うと、
「専用扉は全部、DPLカンパニーの私有地内にあるんだ。関係者以外は立入禁止だよ」
(…そうなんだ……)
三室は納得。
 青島は、あとの2台の超大型車についても、やはり得意げに説明してくれた。それによれば、杉森運転のトラックは「スーパーマシン・ゼロワン」といって、火炎放射・放水等の特殊機能を持ち、黄瀬川運転のワゴン車の名前は「スーパーマシン・ゼロスリー」。荷台に黒い大きな金属の塊を2つ積んでいるらしいが、その使い道については、青島、やたら勿体つけ、ウインクしながらオネエサン口調で冗談めかして曰く、
「使う時が来るまでのお楽しみっ」
だそうだ。


                *


 青島による説明が続く中、ゼロツーは専用道路を進み、やがて、最初に停まっていた駐車場の広さには遠く及ばないが、かなり広めのスペースが、目の前に開けた。
 青島、
「専用扉用の駐車スペースだよ。真上が専用扉」
言って、ゼロツーをそのまま駐車スペースの中央に進め、停める。
 左側にはゼロワンが停まっていた。ゼロツーが突然、ガクンと揺れ、車体の下の床ごと真右へスライドして、中央を空ける。空いた中央へ、ゼロスリーが入って来、停まった。
 シートベルトが自動的に解除されて三室は自由になり、青島と共にゼロツーから降りる。
 赤木・杉森・黄瀬川も、それぞれのスーパーマシンから降りてきた。
 そして、三室以外のメンバーは、それぞれ自分のブレスに向かって、
「戦闘装備」
と言って、どういう仕組みでそうなっているのかは全く分からないが、瞬時に、戦闘時のユニフォーム、スーパースーツという名称らしい、以前から三室も知るスーパーファイブのコスチュームを装着し、駐車スペースの隣の階段を駆け上って行く。
 三室も見よう見まねで、
「戦闘装備」
ブレスに言い、4人の後を追って階段を駆け足で上った。
 階段を上りきった所にある重たそうな金属製のドアを開け、4人は次々と出て行く。
 三室も少し後れてドアを開け、続こうとするが、ドアを開けた瞬間、ドアのすぐ手前の紺色タイルの壁が鏡の役割をしていることに気づき、つい足を止めた。
 そこには、紛れもないスーパーピンクの姿。三室は腕を上げたり下ろしたり、横を向いてみたり後ろを向いてみたりして、それが自分であると確かめずにいられなかった。
(あたしだ……)
 そこへ、
「モモ、何してるのっ? 早くなさいっ! 」
黄瀬川の怒声。
 三室は慌てて、薄暗くなってきているドアの外へと駆け出、こちらを見てあからさまにイライラして待っている黄瀬川に追いつく。少し先で、赤木・青島・杉森も待っていた。
 三室、
「すみませんっ! 」
「まったく! トロトロしてるんじゃないわよっ! 」
黄瀬川は、言うだけ言って、腹立たしげに大きな鼻息を残し、三室に背を向けて走って行く。
 杉森が三室の傍まで戻り、慰めるようにポンポンッと三室の肩を叩いた。
「行こう」

DPL戦闘班スーパーファイブ~ピンクの憂鬱~ (4)


 専用扉からは北口のほうが近く、走って1分ほど。
 三室たちが駅前に到着すると、大勢の一般の人々が、構内から走って出て来るところだった。
 人々の体には、高さ60センチ程で鮮やかな緑色の葉と茎を持ち、枝に同じく緑色のサヤを持つ、枝豆のような植物が巻きついている。 
 (何、あれ……? )
三室は眉を寄せる。
 杉森、
「枝豆だね。命名、『超地球ダイズ』」
 人々は、ダイズを自分の体から外そうとしてか、手や足、体全体を大きく振るっているが、全く外れる様子がない。そうこうしているうちに、新たに構内から次々と、動物のように根の部分を足代わりに動かしてダイズが現れ、這いずりまわって人々を追い回し、更に取り付く。 逃げ惑う人々。 中には、体中、10数体ものダイズに取り付かれ、身動き出来ない人も。
 大変なパニック状態。
 黄瀬川、ブレスに向かって「拡声」と言ってから、そのままブレスに向かい、
「皆様、スーパーファイブです。ただいま到着いたしました。落ち着いて指示に従ってください」
 ブレスが拡声器の役割を果たし、黄瀬川の声が辺りに響き渡る。しかし、その声に反応して落ち着く人など皆無。状況は何も変わらない。
 黄瀬川は溜息をつきながら首を横に振る。
「ダメね。誰も聞いちゃいないわ」
それから、少し辺りを見回し、斜め後方にいたピアノ教室の物らしい手提カバンを持った7・8歳くらいの女児に取り付いたダイズに手を伸ばし、引き剥がそうと力を入れる。が、ビクともしない。次に、腰のベルトに装備していたダガーを抜き、女児を傷つけないよう注意深く、ダイズに突き刺した。 ダイズは薄茶色に変色し、バサッと地面に落ちる。
 黄瀬川は、三室・赤木・青島・杉森を振り返り、
「案外 簡単ね。この方法で……」
 そこまで言ったところで、
「モトさんっ! 」
赤木、黄瀬川の言葉を遮って、変色したダイズが落ちた、女児の足下を指さした。
「あ、あれ……」
 その指の指す先では、変色したダイズのサヤが次々と割れ、中から豆がこぼれ落ちているところだった。それから数秒も待たず、その1つ1つからムクムクと新しい個体が発生。
 息を呑むスーパーファイブ一同。
 新しい個体のうち1体が、黄瀬川に跳びかかる。
 黄瀬川は咄嗟にダガーで一刀両断。
 斬られたダイズは変色して地面に墜落。サヤから豆。そして、やはり、1つ1つの豆が新しい個体に。
 青島、
「斬っても増えるだけか……」
呟く。
 黄瀬川は俯き加減で自分の顎を指でつまみ、何か考えている様子で上の空気味に、
「…そうね……」
相槌をうち、ややして、何かを思いついたらしく、突然ハッと顔を上げ、青島を見た。
「キンさん、火炎放射器は積んでる? ダイズは植物だから、多分、火に弱いわ。 一旦、ダイズをダガーで斬って人から剥がして、新しく発生した個体がまた人に取り付く前に焼き払いましょう」
 青島、困ったように頭を掻き、申し訳なさそうな声で、
「悪い。この間、整備班のヤツに、調整するから貸せって言われて、そのまま預けっぱなしだ。うっかりしてたよ。ホント悪い……」
「そう……」
 再び考え込む黄瀬川に、杉森、
「大掛かりになるけど、ゼロワンのほうの火炎放射は? 」
 返して黄瀬川、
「的は、どのくらいまで絞れます? 」
「半径50センチだね」
 黄瀬川は小さく息を吐き、
「仕方ないわね、それでいきましょう。スギさん、お願いします」
「了解」
杉森は短く答えてからブレスに向かい、
「スーパーマシン・ゼロワン、召致! 」
 直後、地面が微かに震え、専用扉の方向に、地下の駐車スペースに停めてあったはずのゼロワンが姿を現す。三室の位置からは、初め、その上部だけが見えていたが、すぐ次の瞬間、
(……! )
ゼロワン全体が見えた。
(宙に浮いたっ? )
そう見えたのは三室の錯覚。実際には、車体とタイヤが離れ、その間を細く長い金属製の脚で支えられていたのだった。そして、脚を駆使して、器用にビルや民家を避け、幅の狭い生活道路を通って、見事、駅前に到着。駐車出来るだけのスペースを見つけて少し移動し、脚を仕舞った。
(すごい、すごい! )
三室はゼロワンに釘付けになる。
 杉森、ゼロワンに駆け寄り、乗り込んだ。
「火炎放射準備」
と、杉森の声。ゼロワンの荷台上部から、ウィンと音を立てて大きな筒が出てきた。
 青島、
「さあ、オレらは片っ端からダイズを引っぺがしていくか」
 黄瀬川が頷き、ブレスに向かって「通信、スギ」と言ってから、
「スギさん、引き剥がしたダイズが地面に落ちたら、すぐにお願いします」
 ブレスから、返して杉森、
「了解」
 黄瀬川は、三室・赤木・青島を見回す。
「始めましょう」
 三室・赤木・青島が頷くのを確認したように軽く頷いてから、黄瀬川、丁度 目の前を横切った駅職員の中年男性に取り付いたダイズに、ダガーを突き立てる。
 ダイズが変色して地面に落ちた。
 ゼロワン上の大きな筒が回転し、落ちたダイズに照準が合わされる。
 黄瀬川が男性を抱えて、その場から飛び退いた。
 同時、火炎放射がダイズを焼く。黄瀬川の予想通り、ダイズは火に弱かったらしく、その後、燃えた個体は風に吹かれて飛び散り、新しい個体が発生することはなかった。
 黄瀬川、男性に、自分たちが現在、手を打っている最中だが、予期せぬ事態が起こる可能性もあるため出来るだけ早く駅から離れるように、と言い、次のダイズに取り掛かった。
 赤木・青島も、黄瀬川と同じ要領で次々とこなしていく。
 三室も同じようにやろうとし、慣れない手つきで腰のダガーを引き抜いて、OL風の若い女性に取り付いたダイズに斬りつけたところまでは良かったが、変色したダイズが地面に落ちた直後、自分のほうへ向かってきた炎に恐怖を感じ、動けなくなってしまった。
 瞬間、三室と炎の間に黄瀬川が割り込み、三室を突き飛ばしてさがらせ、女性を腕の中に庇って跳んで、地面に転がる。
 ダイズが燃える臭いと入り混じり、ゴムを焼いた時のような臭いが鼻をついた。黄瀬川のブーツの踵部分が僅かに焦げている。
 黄瀬川は身を起こし、自分が立ち上がってから、女性が立ち上がるのに手を貸した。
「大丈夫ですか? ここは、まだ危険です。出来るだけ早く離れてください」
 黄瀬川の言葉に頷いた女性が、その場を去るのを待ち、黄瀬川は、
「ちょっと! 」
三室に向き直る。
 三室は、ちょっと、と言われただけで、ビクッ。
 黄瀬川、三室に人指し指を突きつけながら、噛みつきそうな勢いで続ける。
「ボサッとしてるんじゃないわよ! 一般の人にまで怪我させるところだったのよっ! 分かってんのっ? 」
「す、すみませんっ! 」
迫力に圧され深々と頭を下げて悲鳴に近い声で謝る三室に、黄瀬川は大きく息を吐き、
「もう、だいぶ数も少なくなってきたし、モモは、ここはいいわ。構内と南口の外の様子を見てきてちょうだい。構内に一般の人がいたら、安全に外へ誘導すること。もしダイズに取り付かれていても、引き剥がさなくていいわ。そのままここに連れて来て。それ以外に何か変わったことがあったら、勝手な行動はしないで、必ず指示を仰ぐこと。いいわね? 」
「は、はい! 」
三室の返事に頷き、黄瀬川、赤木に目をやる。
「レンも、モモと行って。ここは私とキンさんで充分だから」
「はい! 」
赤木、返事をして駅構内へ向かいざま、三室に声を掛ける。
「行こうか」
 三室、赤木の後について構内へ。
プロフィール

獅兜舞桂

Author:獅兜舞桂
獅兜座(しっとざ と読みます)座長・獅兜舞桂(しっとまいけー)です。
よろしくお願いします。
以前は恵子ミユキの名で活動しておりました。

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